福祉と相続を活用して、障がいを持つ子どもの未来を守る方法とは?
●障がいを持つ子どもの未来を考える親の不安は大きい
日頃から、障がいを持つお子さんの親御さんや、
きょうだいの方とお会いしていると、
次のような不安な想いを耳にすることが多々あります。
「人生の後半に差しかかり、このまま子どもを残していくのがとても心配」
「自分がいなくなったあと、子どもがひとりで生活していけるのか?」
「将来、障がいのある子のお金や健康の面倒は、誰が見てくれるのか?」
「ほかのきょうだいには、できるだけ負担をかけたくない」
わたしは約10年間、相続・不動産コンサルタントとして活動する一方で、
戸建て住宅を活用した障がい者のためのグループホームを4棟運営しています。
入居者の多くは、知的障がいや精神障がいを持つ成人の方々です。
親が年齢を重ねて不安を抱えるご家庭のなかには、
すでにグループホームなどを活用して、
将来に備えて準備をされている方もいます。
それでも、
残された子どもの将来の生活費や健康管理のことなど、
心配事は尽きません。
でも、多くの場合、親御さんが外部には頼らず、
自宅でお子さんの面倒を見続けているのではないでしょうか。
親御さんが高齢になり、
体力的にも精神的にも負担が大きくなった結果、
はじめてグループホームに預けるケースも少なくないのです。
その際、障がいを持つお子さんは
40代後半から50代になっていることが多く、
それまで親が長年すべての世話をしてきたため、
グループホームなど親元を離れた生活に
多くの不自由を感じることもあります。
さらに、こういったご家庭では、
利用可能な福祉サービスを十分に活用してこなかったケースも多く、
共依存(子が親に甘え、親が子の世話をすることで愛情という名の
自己満足や支配の状態に陥ってしまうこと)
の関係に陥っていることが少なくありません。
「自分がいなくなったらどうしよう…」
と不安を抱えながらも、日々の生活に追われ、
準備に手をつけられないまま
時間が過ぎてしまう親御さんがほとんどです。
たとえ問題意識を持っていたとしても、
「何からどう手をつけていいのかわからない…」
という声も多く聞きます。
●親が元気なうちにできる福祉と相続の選択肢を知る
今年の4月に、わたしは6冊目の書籍
『障がいを持つ子の親が70歳までに準備するべき相続対策』(Kindle版)
を出版しました。
障がいを持つお子さんが将来にわたってしあわせに暮らせる環境を、
できるだけ早い段階から整えてもらいたい、
親御さんが安心して過ごせる第一歩を
踏み出すきっかけにしていただきたい、
という想いで執筆した本です。
今回の書籍では、細かい手続きの解説はしていません。
その前に、まずご自身の現状を把握し、
どのような選択肢があるのかを知ることが重要だと考えています。
現状を知ったうえで、
障がいを持つお子さんが周囲の支援を受けながら、
しあわせに生活できるための環境を整えるきっかけになれば幸いです。
どうかひとりで悩まず、抱え込まないでください。
自治体や病院、福祉施設などと連携しながら、
少しずつサポート体制を築いていくことが大切なのです。
親が亡くなったあとのことを考える際には、
次の2つの観点が欠かせません。
・福祉サービスを活用しながら、本人が自立して生活できる環境を整えること
・お子さんのために何をどのように遺していくのか、相続の視点を考慮すること
それぞれの家庭の状況によって、適切な対策は異なります。
わたしが、障がい者グループホームを運営するなかで感じるのは、
どのケースもひとりとして同じではないということ。
そして、一般の人と比べると時間はかかるかもしれませんが、
どんな人でも成長できるということです。
早い段階から準備をすることで、お子さんの選択肢が増え、
親御さん自身も「子どものため」だけでなく、
親御さんやきょうだいの方々の人生を、
より充実させることができます。
大切なのは、「亡くなったあとのこと」ではなく、
「元気なうちに準備を始めること」です。
福祉と相続、この2つの視点から、
親亡きあとを見据えた準備を進めていきましょう。