ひとりで抱え込まなくても大丈夫
●「頼る」ことも大切な選択
「この子を支えられるのは、自分しかいない」
そんな思いで、ひとりでがんばり続けている
親御様も多いのではないでしょうか。
でも、すべてを家族だけで抱え込む必要はありません。
地域には、お子様だけでなく、
ご家族にも寄り添い、
一緒に見守ってくれる人たちがいます。
これからご紹介するのは、
「頼ることは弱さではなく、
親子が安心して暮らしていくための大切な一歩だった」
と気づいた、あるご家族のお話です。
●【挿話】「頼ること」の温かさ
午後の陽ざしが、薄いカーテン越しに部屋を照らしていた。
「おかあさん、また誰かが外で僕の悪口を言っている気がする」
息子の翔は、リビングの隅で小さな声で言った。
統合失調症と診断されたのは、5年前。
30代半ばの頃だった。
最初は
「ちょっと疲れているのかも」
と思っていたけれど、
次第に妄想や幻聴の症状が強くなり、
入退院を繰り返すようになった。
退院後は落ち着いていたが、
季節の変わり目になると不安定になる。
わたしはできる限り穏やかに答えた。
「大丈夫よ、誰も悪口なんて言ってないわ。」
でも、その言葉が彼を安心させるとは限らない。
翌日、地域の「精神保健福祉センター」に相談に行った。
担当の保健師さんが、
わたしの話を静かに聞いてくれた。
「おかあさま、翔さんのような方はとても繊細なんです。
おかあさまが『受け止める側』になりすぎると、
ご自身の心が疲れてしまいますから、
地域で一緒に見守っていきましょう」
そのひと言に、涙があふれた。
わたしはずっと、
「親ががんばらないと」
と思っていた。
でも、がんばりすぎることが
息子を苦しめることもあるのだと気づいた。
その後保健師さんがつないでくれたのは、
地域の「生活支援センター」だった。
スタッフの男性が、
翔に優しく声をかけてくれた。
「翔さん、今度週1回だけでいいので、
作業所を見に来ませんか?
人と話さなくてもいい、
黙って作業する時間もありますよ」
翔は小さくうなずいた。
それが、外の世界へ踏み出した最初の一歩だった。
その夜、わたしはノートに書いた。
・地域の支援員さんが翔に合う作業を提案
・「支える」から「一緒に見守る」に気持ちが変化
・行政・医療・地域がつながると、安心の輪ができる
「頼る」がこれほど温かいものだったなんて…
あの日わたしは、ようやくその意味を知った。
* * * * * * * *
『大人の発達障がい-
知的障がい-
引きこもりの子を持つ
50代以上の親のための
将来設計ノート』
好評発売中!


