未来を描くことで、親子の笑顔を取り戻す
●「どんなふうに暮らしたい?」から始まった親子の時間
お子様の将来を考えると、
「この先、この子はどう暮らしていくのだろう」
「自分がいなくなったあとも大丈夫だろうか」
と、不安が先に浮かぶ親御様もいらっしゃるでしょう。
でも、未来について考えることは、
不安への備えだけではありません。
「どんな場所で暮らしたい?」
「どんなことをしてみたい?」
と、お子様の気持ちに耳を傾けてみることで、
これまで気づかなかった願いや
可能性が見えてくることもあります。
そして、お子様の未来を考える時間は、親御様自身が
「これから、どんな毎日を過ごしたいのか」
を見つめ直すきっかけにもなります。
これからご紹介するのは、
1冊の「将来設計ノート」をきっかけに、
親子それぞれの未来を少しずつ描き始めた母と娘のお話です。
●【挿話】親が笑顔を取り戻すことで始まる未来
カフェの窓の外では、秋の陽射しが街路樹を照らしていた。
母の美佐子は、娘の結衣と並んで座っていた。
テーブルの上には、手書きの「将来設計ノート」と温かい紅茶。
「こうして一緒に出かけるの、久しぶりだね」
「…うん」
結衣は小さく笑った。
人混みが苦手な彼女が、
自分から「行ってみたい」と言ったのははじめてだった。
通所先の支援員さんに背中を押され、
「少しずつ『未来の話』をしてみようか」
と言われたのがきっかけだった。
「結衣、将来どんなふうに暮らしたいと思う?」
母の問いに、結衣はしばらく考え込んでいた。
「…人と一緒に住んでもいいけれど、ちゃんと自分の部屋がほしい」
「うん、うん」
「あとね、カフェとか静かな場所で働けたらいいな。
おしゃべりは苦手だけど、お皿を並べるのとか、
そういう仕事ならできると思う」
母はそっとノートを開き、ゆっくりとペンを動かした。
<結衣の「理想の未来」>
・静かな場所で働く
・ひとりの時間を確保できる住まい
・支援員や友人がそばにいる環境
・お金の管理は支援と一緒に
・休日には母とお茶を飲む時間
「おかあさんの未来も書いていい?」
と結衣が聞いた。
「もちろん」
「じゃあ、『おかあさんがいつも笑っている』って書く」
その言葉に、美佐子は思わず涙ぐんだ。
このノートは娘のためのものだと思っていたけれど、
本当は、母自身の心を整理するためのノートでもあった。
「ありがとう、結衣」
「だって、おかあさんが楽しそうだと、わたしも安心するんだもん」
その帰り道、2人は駅前の花屋に寄った。
結衣が選んだのは、黄色いガーベラの花束。
「元気になる色でしょ」
未来を描くということは、遠くの理想を追うことではなく、
今日という日を穏やかに生き直すこと。
美佐子は思った。
「この子の未来は、親であるわたしが
笑顔を取り戻すところから始まるのかもしれないな」
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