いつかのために、いま想いを言葉に残す
●伝えたい想いを、いま言葉にしておく
わが子に伝えたいことがある。
そう思いながらも、日々に追われて言葉にできていない。
そんな感覚を覚えたことはありませんか。
これからご紹介するお話は、
そういった「伝えたい想い」と向き合った、
ある親の姿です。
●【挿話】言葉を「支え」として残す
午後3時。
リビングのカレンダーには、
赤いマーカーで書かれた文字があった。
「3月15日 大地の誕生日」
わたしは小さなケーキを買ってきて、
ろうそくを3本立てた。
「大地、30歳おめでとう!」
そう言うと、息子は少し照れくさそうに笑った。
知的障がいと発達障がいをもつ彼は、
感情の表現が少しぎこちない。
でも、嬉しいときは目がまん丸になる。
その顔を見るだけで、
わたしは胸がいっぱいになった。
食後、彼がテレビを見ている間に、
わたしはテーブルにノートを開いた。
そこには、何度も書き直したメッセージがある。
「大地へ。あなたの笑顔が、わたしの一番の宝物です。
わたしがいなくなっても、きっと誰かが助けてくれる。
だから安心して、あなたらしく生きてください」
書いている途中で、涙がこぼれた。
生きているうちに伝えられる言葉を、
どうしてこんなにも後回しにしてきたのだろう。
「伝えること」は、「手放すこと」にも似ている。
このノートを見つける日には、
わたしはいないかもしれない。
それでもいい。
いつか彼が誰かに助けを求める勇気を持てるように、
わたしの言葉を「支え」として残したい。
夜、彼が寝たあと、わたしはページをそっと閉じた。
「おかあさんは、あなたの味方だよ」
最後にそう書き足した。
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