入居者のさまざまなタイプを理解する
●プライドが高く、逆ギレするタイプもいる
グループホームでは、さまざまな人間模様が繰り広げられています。
今回は、統合失調症があり、知的障がいも入っていて、精神的な発達も遅れ気味の40代女性利用者の話です。
この人はいま、就労継続支援B型に通っています。
あるとき、この利用者が急に
「就労移行(支援事業所)を見たいから連れて行ってほしい」
と言ったことがありました。
翌日、たまたまスタッフが就労移行支援事業所を訪問する予定になっていたので、一緒に見学をすることに…。
ところが、担当者の方がいろいろ親切に説明してくださったにもかかわらず、言っていることがわからなかったようです。
そして、最後にはあまりにも話についていけなかったために、
「わたしがわざわざ来てあげたのに、こんな話をいったいいつまで聞かなきゃいけないの?」
と、キレてしまいました。
話がわからない自分を認められず、相手の話し方が悪い、と話をすり替えてしまったのです。
就労移行の担当者さんも、説明しても難しいと察して、
「今日のところはここまでにしておきましょう」
と話を切り上げてくださいました。
この利用者さんは、
「わたしは何でもできる、何でもわかる」
と自己評価が高いところがあります。
「自分はきちんと話している、わからない話をしてくるのは相手のほうだ」
というように、話をすり替えてしまい、自分の理解力のなさをなかなか認めようとしません。
このタイプには、総じてプライドが高く、話をすり替えて相手のせいにしてしまう人が多いのです。
自分ができないことを、まったく認めないわけではないのです。
ただ、何ができないのかをわからないのではないでしょうか。
●「変化」に弱く、急な予定変更でパニックになってしまうケース
グループホームに入居する人は、変化に弱い傾向があるとも感じます。
そもそも、グループホームに入ること自体、生活拠点がガラッと変わることです。
そんな変化に対して、うまく心や身体を対応させるのが難しいのかな、と感じることが多くあります。
たとえば、ずっと実家で暮らしてきたある30代の男性は、将来を見据えた自立の練習のためにグループホームへ入って来ました。
入居してから1年弱、イライラして表現のコントロールが効かず、バーッと人に感情をぶつけることがよく見られました。
グループホームに暮らすなかでの変化で、イライラすることがもっとも多いパターンは、急な予定変更です。
なかには、パニックになってしまう人もいます。
たとえば、勤務予定のスタッフが急遽交代したり、お花見などのイベントが中止になったり、といったケースや、
「予定にはありませんでしたが、◯◯時から、急遽〜を予定します」
といったことになると、ワーワー叫び、話が止まらなくなったり、様子が変わったりする人もいます。
入居者ごとに「モニタリング会議」を大人数で行うことがあるのですが、戸建て住宅のなかの限られた共有スペースや、急遽、リビングを使うこともあって、対象ではない入居者にはお部屋に戻っていただくことも…。
そんなとき、
「リビングを使いたかったのに…、どうすればいい?」
と途方に暮れてしまうようなこともあるのです。
いつもの自分の日常と時間の流れが変わる、もしくは予定が変わることへの気持ちの対応がうまくできないときに、感情のコントロールができません。
「ご協力をお願いします」
とあらかじめご了承いただくようにはしているのですが、なかなか気持ちの切り替えが難しいようです。
ただ、時間はかかりますが、予定通りにいかないことや変更・変化することに対して、徐々に慣れて対応できる場面が増えていきます。
グループホームでは、小さな経験を積み重ねながら練習していくことで、生きづらさを克服していくことも可能になるのです。