声かけに迷う日々のなかで見つけた、小さな「できた」の力
●声かけに迷いながらも、わが子と向き合う
日々のなかで、
「この声かけでよかったのだろうか」
と迷う瞬間を感じたことはありませんか。
これからご紹介するのは、
そんな戸惑いを抱えながらも、
わが子と向き合い続ける親の姿を描いたお話です。
●【挿話】小さな一歩でも「できた」と書き残す
リビングの窓を開けると、春の風がカーテンを揺らした。
娘の沙織がソファに座って、じっとスマホを見つめている。
「また眠れなかったの?」
「うん。頭がカッカして、止まらなかった」
沙織は37歳。双極性障がいの診断を受けて5年になる。
気分が上がると、部屋の模様替えを夜中に始めたり、
ネット通販で大量に洋服を買ってしまったりする。
でも、次の日には「何もしたくない」と泣きながらベッドにこもる。
わたしには、どの言葉が励ましで、
どの言葉が重荷になるのか、いまだにわからない。
「おかあさん、わたしって、変なのかな?」
沙織がつぶやく。
「みんなは普通に働いて、普通に恋して、普通に生きているのに、
わたしだけ止まっている気がする」
わたしは少し考えて、ゆっくりと言った。
「止まっているんじゃなくて、『休んでいる』のよ。
沙織には、ちゃんとエネルギーがある。だから疲れるの」
彼女は黙ってうつむいた。
その横顔に、わたしはかつての
「完璧にしようとして苦しくなったわたし」を見た気がした。
夜、彼女が部屋に戻ったあと、ノートに書いた。
・沙織の強さ:感情を言葉にできること
・今日できたこと:朝起きて話せた
・次の目標:医師と次の支援計画を相談する
小さな一歩でも、それを「できた」と書き残す。
書くことは、自分にも「認める力」を与えてくれる。
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