子どもの言葉の奥にある「本当の気持ち」を理解する
●「できない」を責める前に、親が見つけたいもの
お子様の日々の様子を見ながら、
「この子はいま、どんな気持ちでいるのだろう」
と考えることはありませんか?
うまくいかない日が続くと、
親としてどう声をかければいいのか、
迷う瞬間もあるかもしれません。
そんなある日の出来事をご紹介します。
●【挿話】親の新しい役割
朝の食卓に、まだ湯気の立つ味噌汁を置きながら、
わたしは時計を見た。
もう9時を過ぎている。
「大地、そろそろ起きないと作業所に遅れるわよ」
2階からドタドタと足音がして、息子が寝ぐせのまま降りてきた。
「…今日は行かない」
そう言って、ソファに沈み込んだ。
「どうしたの?」
と聞いても、答えはない。
少し様子を見ていると、昨夜も寝る前に
YouTubeを見ながら笑っていたのを思い出した。
機嫌がよかったり、急に怒ったり、
彼の一日は波のように動く。
「怒っている?」と聞くと、
「別に」と小さく返された。
その言葉の奥に、何か疲れたような気配があった。
大地は軽度の知的障がいと発達障がいを併せ持つ。
計算や会話はできるが、感情のコントロールが難しい。
通所先でトラブルがあると、すぐに自信をなくしてしまう。
わたしはつい口を出してしまう。
「どうして行かないの? みんな待っているのに」
「うるさい!」
と大地は声を荒げた。
その瞬間、空気がピンと張りつめた。
しばらくして、彼は小声でつぶやいた。
「僕、仕事がうまくできないんだ。間違えると、みんなに笑われる気がする」
その言葉を聞いたとき、胸の奥で何かがほどけた。
叱るより、まず〝怖さ〟を理解してあげること。
それが必要だったのだと気づく。
「そうだったのね。つらかったね」
そう言うと、大地は小さくうなずいた。
午後になって、彼は自分から洗濯物を取り込んだ。
わたしはノートに書いた。
・大地が今日、自分でできたこと:洗濯、昼食の準備
・「行けない日」も、彼の努力の一部
・できたことを、忘れないように書いておく
「できない」と思っていた日でも、
じつは「できていること」がある。
それを見つけるのが、親の新しい役割なのかもしれない。
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