「親亡きあと」のことを考えよう
●事前の対策で防げる問題がある
「障がい」という言葉を聞いたとき、
どのようなイメージが思い浮かびますか?
障がいにはさまざまなケースがあり、
主に身体的な障がいと精神的な障がい、
知的障がいの3つに分類されます。
わたしが運営している障がい者グループホームは、
パラリンピックに出場するような身体的な障がいを持つ方々ではなく、
精神的や知的な障がいを抱える方を対象とした施設です。
障がい者グループホームについては、拙著
をご覧いただけると幸いです。
障がいを持つ子どもの親が、
将来的に直面する可能性のある問題は多岐にわたります。
たとえば、親の収入が途絶えたあとの生活費の確保といった経済的な問題、
きょうだいがいない場合に家族からの支援が期待できず、
社会的に孤立してしまう状況、
日常生活をサポートする人を確保することなど、
考えればキリがありません。
対策を先延ばしにしたことで、
問題が深刻化してしまうケースが現在でも少なくないのです。
貧困や社会的な孤立、生活上の深刻な問題なども、
事前に対策を講じることで、防ぐことができます。
困難な問題ほど、親御さんがひとりで抱え込まないことが重要です。
ご家庭に必要なサポートを確認し、
まずは最初の一歩を踏み出してみませんか。
●対策が不足してきょうだいに負担がかかるケースも多い
先日、ある人から「障がいのあるきょうだいの面倒を、
急に任されて困っている」とのご相談を受けました。
その人のケースでは、親は70歳を超えていて、
障がいのあるきょうだいは40代後半。
親と同居しているそのきょうだいは、毎日ほぼ同じ生活を送り、
日中は寝て過ごし、ほとんど外出しないため、
お互いに親離れ、子離れがうまくできない状態なのだそうです。
相談者によると、親から突然「これからは頼むよ」と言われ、
夫婦で毎日世話に追われる状況になっているといいます。
そして、
「自分たちも仕事があるため、どうしたらいいか困っている…」
と相談に来られました。
このように、40代の子どもが自宅に引きこもりがちで、
その生活を支える70代の親が、経済的にも精神的にも
限界に達しているケースが増えています。
障がいのある子どもを持つ家庭では、
親が支えられなくなったことで、
突然きょうだいがその役割を担うことが多く見受けられます。
一定の年齢を超えてから生活習慣を改善することは難しいので、
面倒を見る家族の負担はとても大きなものです。
また、障がい者向けのグループホームに入ろうとしても、
年月が経って年齢制限を超えてしまい、
入所できなくなってしまうケースも多く見られます。
その場合は、高齢者施設への入所が必要になることがありますが、
手厚いサービスを提供する施設は
障がいを持たない人からの希望も多いので、
入所が難しいこともあるのです。
●自立をうながすことも必要になる
親が亡くなったあと、
障がいのある子どもが自立をするためには、
たとえ子どもがかわいい存在であっても、
ときにはまわりが厳しく接することも必要です。
子どもの将来を考えるとき、
愛情を持って突き放すことも大切なのではないでしょうか。
もっとも避けたい状態は共依存です。
これは、子どもが親に甘え、
親が子どもの世話をすることで、
愛情という名の自己満足や支配に陥ってしまう状況です。
ですから、親が子離れできるかどうかが、
子どもの自立においてとても重要な要素となります。
障がいを持つ人のケアは、ゆっくりと進むプロセスです。
3歩進んで2歩下がりながら、
時間をかけて朝起きられるようにサポートすることも
めずらしくありません。
一時的に後退することもありますが、
努力を続けることで、
長期的に見ると少しずつ前進していることが実感できます。
長年同じ方法を続けてきた人にとって、
その状態を変えるのはなかなか難しいかもしれません。
でも、子どもの年齢によって適用できる対策は、大きく変わります。
親も子どももできるだけ早い段階で、
自立に向けて意識を変えていきましょう。